研究概要 |
(目的)近年、ヒトにおける^1H-MRSを用いた骨格筋細胞内脂質(IMCL; intramyocellular lipid)の定量的評価が可能となり、細胞内脂質とインスリン抵抗性の関連が明らかにされてきた。日本人において高脂肪食が肥満の発症とは独立してIMCLを増加させ、インスリン抵抗性を惹起し、メタボリックシンドロームや2型糖尿病の発症に結びついていることが推測される。そこで、今回我々は、一定量の高脂肪負荷による骨格筋細胞内脂肪の増加の程度を「脂肪負荷感受性」として新規に定義し、脂肪負荷感受性の生理的規定因子、遺伝的影響、原因遺伝子を同定することを目的とした。(対象及び方法)20-30歳の健常人を対象とした。それぞれの被験者に対してMRI測定装置(東芝VISART EXV4.40)を用いて、前脛骨筋(TA; tibialis anterior muscle)、ヒラメ筋(SOL; soleus muscle)におけるIMCLを測定した。また、高インスリン正常血糖クランプ法(目標血糖値95mg/dl、インスリン注入速度100mU/m^2/min)による骨格筋のインスリン感受性の評価を行った。(結果と考察)3日間の高脂肪食摂取で、SOLおよびTAにおけるIMCLは有意に増加し、IMCLの変化とGIRの変化には有意な負の相関を認めた(TA; r=-0.58,P<0.05,SOL; r=-0.60,P<0.05)。ヒラメ筋において身体活動量と高脂肪食摂取後の骨格筋細胞内脂質の増加率に強い負の相関を認めた(r=-0.72,P<0.01)。これらのことから、生理学的には脂肪負荷感受性は明確に存在し、それがインスリン抵抗性の発症と関連していることが明らかになった。日常身体活動量がその規定因子の一つであることが示唆された。今後、症例を増やすと共に骨格筋生検とマイクロアレイによる解析を随時行い、脂肪負荷感受性を規定する遺伝子についても解析し同定していく。
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