研究概要 |
大都市在住70歳以上の高齢男女1,484を対象に「介護予防」を目的とした包括的健康診断行い、転倒、尿失禁、生活機能低下、外出頻度減少などの老年症候群の有症状況を詳細に把握し、2つ以上の徴候を同時に持っている場合に複数徴候保持者と定義した。その結果、複数徴候保持者は208名(14.0%)であった。複数徴候保持者に「老年症候群の徴候改善教室」を案内したところ、99名(47.6%)が教室参加を希望し、109名(52.4%)は不参加であった。教室参加希望者をRCTにより運動群50名、対照群49名に分け、運動群には週2回、1回当たり60分、3ヶ月間、筋力アップ、歩行機能の改善、バランス能力の向上、尿失禁改善を目的とした総合的運動指導を行った。運動指導期間中の教室出席率は平均70.5%(60.0〜88.0%)であり、3名(運動群:2名、対照群:1名)が脱落した。得られた主な成果は、体力および老年症候群の徴候変化の2側面から検証した。まず、介入群と対照群の体力の変化について繰り返しのある分散分析法を利用して分析したところ、足背屈力(F=12.63,P=0.001)、膝伸展力(F=30.86,P<0.001)、最大歩行速度(F=7.355,P=0.008)で有意差がみられ、介入群の変化は対照群の変化より大であった。しかし、握力、開眼片足立ち、通常歩行速度では両群間で有意な差はなかった。次に、介入群で、生活機能の自立(事前72.0%→事後79.2%)、1日1回以上外出(事前44.0%→事後68.8%)の増加傾向、尿失禁者(事前82.0%→事後68.8%)の減少傾向が観察された。これらの体力向上および老年症候群の徴候改善の長期効果を検証するための追跡調査が今後の課題である。
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