本研究は、大阪産野菜の利用度を高め、地域の活性化や地域住民の食生活の質の向上の一助となることを目標に、その基盤となる学術的情報を得ることを目的とした。昨年度、葉ゴボウに含まれる主要抗酸化成分であるクロロゲン酸とルチンの含量が出荷最盛期に高くなることを見出した。本年度はこれらの抗酸化成分の加熱調理による消長について検討を加えた。具体的には、抗酸化成分含量の多い葉ゴボウ葉身の電子レンジ加熱(20秒)およびゆで加熱(2分)前後のクロロゲン酸とルチンをHPLCを用いて定量した。まず、一枚の葉身を縦半分に二分し、それぞれのクロロゲン酸とルチンの量を測定したところ有意差が認められなかったので、加熱実験では、縦半分にした葉身のペアの一方を加熱し、もう一方は酸化酵素の影響を防ぐため切断後直ちに液体窒素で凍結して凍結乾燥を行い未加熱試料とした。加熱後の葉身およびゆで汁も各々凍結乾燥したものを加熱試料とした。未加熱および加熱試料中のクロロゲン酸とルチン量を比較すると、電子レンジ加熱、ゆで加熱ともに、未加熱試料より加熱試料(ゆで加熱の場合は加熱後葉身とゆで汁の和)の方がクロロゲン酸、ルチンの含量が高いという結果になった。また、ゆで加熱では、加熱後葉身とゆで汁中の抗酸化成分はおよそ1:1の割合で分布していた。一方、クロロゲン酸水溶液を2分間加熱しても、加熱前後のクロロゲン酸量に変化はなかった。本実験方法は酸化酵素や加熱、未加熱試料からの成分の抽出効率の影響を受けないように配慮していることから、葉ゴボウ葉身に含まれる抗酸化成分は、今回設定した加熱条件下では安定であり、加熱後にこれらの抗酸化成分量が増加したという現象は、未加熱の状態では結合型であったクロロゲン酸やルチンが加熱によって遊離型に変化したことが原因である可能性が示唆された。以上より葉ゴボウに含まれる抗酸化成分は加熱調理による大きな損失はなく、機能性が保持されるものと期待できる。
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