食をとりまく環境が変化している昨今正確な食情報が求められている。食の安全と安心を目指すには科学的な知見をもとにした情報が重要である。放射線照射処理食品(照射食品)とは放射線を食品に照射して殺菌、殺虫、発芽防止などを行う技術のことである。すでに多くの国で照射食品を導入しているが、我が国では発芽防止の馬鈴薯のみである。輸入食品に依存している我が国では照射食品の安全と安心に寄与する研究が必要である。本研究により厳密な照射食品検知法が確立できる。また照射食品のリスクコミュニケーションを試案し照射食品に関するリスクを評価することは消費者教育において重要である。平成19年度に実施した研究の具体的内容は3項目ある。1.電子スピン分光法(ESR)により照射食品の放射線照射履歴の定量法を検討、2.照射誘導ラジカルの健全性評価、3.リスクコミュニケーションの試案である。1については照射誘導ラジカルをESRにより厳密に信号強度を計測する手法を開発する成果を得た。2についてはESRによるスピントラップ法を導入し照射誘導ラジカルの定量ができるかどうかについて、スピントラップの反応系とラジカル試薬の選定を行った。3についてはリスクコミュニケーションの試案を目指す実態調査について調査項目の検討を行った。また諸外国の実態調査としては、本年度はフィリピンで実施した。平成19年度に実施した研究の具体的内容を遂行することにより検知法の基礎ができた。またラジカルの新たな健全性評価方法が構築できる反応系を開発することができた。またリスクコミュニケーションの試案については極めて初期段階ではあるが調査に要する情報収集が可能になった。
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