食をとりまく環境が変化している昨今正確な食情報が求められている。食の安全と安心を目指すには科学的な知見をもとにした情報が重要である。放射線照射処理食品(照射食品)とは放射線を食品に照射して殺菌、殺虫、発芽防止などを行う技術のことである。すでに多くの国で照射食品を導入しているが、我が国では発芽防止の馬鈴薯のみである。輸入食品に依存している我が国では照射食品の安全と安心に寄与する研究が必要である。本研究により厳密な照射食品検知法が確立できる。また照射食品のリスクコミュニケーションを試案し照射食品に関するリスクを評価することは消費者教育において重要である。 平成20年度に実施した研究の具体的内容は3項目 : 1. ESRによる分析法の確立、2. 照射誘導ラジカルの健全性評価、3. リスクコミュニケーションの試案である。 1. 平成19年度はESRによる分析法の原理を検討し、平成20年度はこれを継続して実施し分析法を確立した。ESR装置の設計については小型電磁石の設計をうけてマイクロ波ブリッジ回路の設計に取り組んだ。 2. in vivo ESR計測の導入による照射誘導ラジカル計測実験系の検討と健全性評価法を実施した。活性酸素種を不均化する酵素にSuperoxide dismutase(SOD)がある。ESRを用いスピントラップ法によりSOD活性の測定が可能になった。平成19年度から、in vivo ESR計測の実験系を照射食品計測に導入するための新規計測系を検討しているが、平成20年度は新たなラジカル試薬の合成と導入によりin vivo ESR計測を高度化した。 3. 実態調査を継続して実施した。調査項目は利害関係者間のリスクコミュニケーションの実態や消費者の食品照射に対するリスク認知に特化した。実態調査の結果を整理している。
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