研究概要 |
放射線照射処理食品(照射食品)とはガンマ線のような放射線を食品に照射して殺菌、殺虫、発芽防止などを行う技術のことである。すでに多くの国で照射食品を導入しているが、我が国では発芽防止の馬鈴薯のみである。輸入食品に依存している我が国では照射食品の安全と安心に寄与する研究が必要である。本研究により厳密な照射食品検知法が確立できる。また、照射食品に関するリスクコミュニケーションの検討は消費者教育において重要である。 平成22年度に実施した研究の具体的内容は1,ESRによる分析法の確立、2,照射誘導ラジカルの健全性評価、3,リスクコミュニケーションの試案である。 電子スピン共鳴(ESR)法はEUの照射食品検知法に導入されているが定性法であり照射履歴を明らかにすることはできないが、電子の緩和現象を検討した厳密計測条件を用いることにより照射履歴を明らかにできた。照射誘導ラジカルの健全性評価をin vivo ESR計測で検討した。照射食品の摂取により生体内において照射誘導ラジカルが活性酸素種のように作用することが予想される。スーパーオキサイド発生系(ヒポキサンチン、キサンチンオキシダーゼ)やヒドロキシラジカル発生系(過酸化水素、UV)において、新規合成ラジカル試薬を用い、発生したラジカル種を効率よく捕捉し、安定したESRアダクト信号として観測する分析法を確立した。また、この計測法は自動化測定が可能なフローの系に高度化した。照射誘導ラジカルの生体での反応性を未照射試料と比較して検討したが差異は認められず照射処理食品の健全性が評価できた。中学校や高等学校における放射線教育の教材を開発し、リスクコミュニケーションの試案につなげた。
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