研究概要 |
レスベラトロールは、「フレンチパラドックス」に関与する分子として注目されている。我々は、生活習慣病予防の標的分子として認められているPPARの3種類のサブタイプ(α, β/δ, γ)を、レスベラトロールが選択的に活性化することを培養細胞系で明らかにしている。今年度は前年度に引き続き、PPARα欠損型および野生型マウスにレスベラトロールを連続摂取させ、個体レベルでの作用について検討した。レスベラトロールを摂取した野生型マウスでは、血漿のトリグリセリドと総コレステロール濃度がPPARα依存的に減少した。さらに、野生型マウスの肝臓では、脂肪酸の取り込み, 輸送, 酸化、寿命延長等に関与する酵素の遺伝子発現誘導が見られた。PPARα欠損型マウスでは発現誘導が見られなかったことから、これらの遺伝子はPPARα依存的に誘導されることが明らかとなった。さらに、レスベラトロールを1年以上摂取させたところ、野生型マウスではレスベラトロール摂取によって生存率に差が認められ、寿命延長効果の可能性が見出された。以上より、レスベラトロールは個体レベルにおいてPPARα活性化能をもち、この分子作用機構を介して生活習慣病予防に関与する可能性が示唆された。 さらに、食品機能成分の生活習慣病予防の作用機構の解明を目指し、我々はPPAR活性化よびCOX-2発現抑制を指標とした食品成分の機能性評価を行っている。これまでに、この方法を用いて、タイム油から両効果をもつ成分としてカルバクロールを同定するとともに、バラ油成分についての評価を行っている。今年度はレモングラス油の評価を行った。その結果、レモングラス油の主成分は、PPARαおよびγの活性化能をもち、PPARγに依存したCOX-2発現抑制効果をもつことを見出した。
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