研究概要 |
プリオンは狂牛病の原因分子とされているが、発症機構や科学的な予防法が未解決であるばかりでなく、分子の本来の機能も未知である。一方、プリオンやプリオン関連蛋白質であるドッペルは、最近発がんとの関わりも指摘されている。本研究では、プリオン遺伝子とドッペル遺伝子についてその遺伝子産物の正常機能を、特に、活性酸素除去機能(SOD活性)や細胞アポトーシス活性制御に関して追究し、また、RNAiを利用して細胞内の情報伝達系を解析した。 まずアボトーシスや細胞膜抗酸化作用との関連を追究するために、作製したプリオン及びドッペルの発現ベクターを用いて、リンパ系細胞に強制発現させ、紫外線照射時や血清除去時のアポトーシスに対する細胞の挙動変化を解析した。プリオン関連蛋白質と微小RNAとの結合の有無を検討したが、特定のRNAとは結合していない。ドッペル蛋白質ではプリオン蛋白質と異なる機能が報告されており、Bcl2関連アポトーシスカスケードの中で機能していることが示唆された。アダプター蛋白質NESHとの相互作用を免疫沈降やウエスタン法で確認し、生化学的な検討を詳細に加えている。SOD活性については、WAT1を用いて測定し、ドッペル蛋白質がSOD活性を阻害していることが判明した。 また情報伝達カスケードをターゲットとしたsiRNAシステムを利用して、RNAiによる細胞内のプリオン蛋白質とドッペル蛋白質の機能変化及び相互作用の変化を検討しながら、アダプター蛋白質の局在変化やSOD活性とアポトーシス制御能を探った。さらに分子間の相互作用とがん化情報伝達と細胞膜変化の解析を進め、プリオン関連蛋白質とアダプター蛋白質のNESCA,NESHについてもプリオン関連蛋白質との関係を明らかにした。特にNESHの挙動について解析した結果を論文に発表した。
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