生活習慣病が世界的に大きな問題となっているため、果物や野菜・茶類などに多く含み、摂取量も多い抗酸化物質であるポリフェノールの生理効果を利用した疾患の予防および治療に期待が寄せられている。そこで本研究では、ベトナムにおいて広く飲用され、ポリフェノール含量が高い植物であるCleistocalyx operculatus花の芽(COB)を用い、STZ-糖尿病マウスにおける抗糖尿病作用を遺伝子の発現により検討した。ICR雄マウスを用いて、健常群(N群)、糖尿病群(DC群)、COB投与糖尿病群(DB群)の3群に分けた。DB群はCOB抽出液を10週間投与した(500mg/kg/bw)。肝臓および腎臓からmRNAを抽出し、さらにcDNAを合成し、DNAマイクロアレイおよびリアルタイムPCRを用いて、組織中の遺伝子発現レベルを測定した。肝臓においては、3回の分析により3回ともその発現が3倍以上の上昇がみられた遺伝子が約50あり、3回とも3分の1以下に発現が減少した遺伝子が14あることが、DNAマイクロアレイの測定結果により分かった。リアルタイムPCRにより発現の変化を確認したところ、抗酸化に関与する遺伝子FMO2がDC群では高値を示したのに対し、N群およびDB群は有意に低値を示した。一方、腎臓においては、3回の分析により3回ともその発現が3倍以上の上昇がみられた遺伝子が17あり、3回とも3分の1以下に発現が減少した遺伝子が55あることが、DNAマイクロアレイの測定結果により明らかとなった。リアルタイムPCRにより発現の変化を確認したところ、インスリンシグナルに関与する遺伝子Trip10がN群、DC群では低値を示したのに対し、DB群は高値を示した。COBは、糖尿病の発症および進行に関与する遺伝子の発現を抑える一方で、発症・進行を抑制する遺伝子の発現を促進することが示唆された。
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