本研究では、博物館の持つ学習資源を活用し、小学校教員養成課程を支援するプログラムをモデルとして開発実施・システム化し、これをモデルとして将来的には各所に普及することにより相乗的な効果をもたらすことを目的としている。 平成22年度は、本調査研究の最終年度として、モデルプログラムの汎用性の検証と、プログラムを実施するためのシステム化を試みた。あわせて、学会発表および国際シンポジウムの開催を通じて、過去4年間にわたる研究成果の公開と外部意見の聴取を行った。主な成果を以下にまとめる。 (1)岩手大学教育学部と盛岡市立子ども科学館の連携による小学校教員養成支援プログラムの試行を行った。地域の教育資源を活用した効果的な学習の場の創出が可能であるとの知見を得るとともに、教育委員会を加えた現職教員の研修とも連携できるシステムモデルへの発展の可能性を示唆することができ、他機関における本プログラムの有効性とシステムとしての発展の可能性が明らかになった。また、現職の教員を取り込むといった、博物館を知のプラットフォームとする可能性についても知見を得ることができた。 (2)これまでの調査から得られた事例から、小学校教員養成課程を支援するシステム化のための要素を抽出した。「自然から課題を切り取る力の育成」「時間的制約と学生が培う経験量とのバランス」「モチベーションの維持・向上」という課題と、システム化にあたっての参考になる事例を検討し、「科学教授センター(仮称)」の設置を中心とした、システムモデルを提案した。 (3)2010年11月に国際シンポジウムを行い、国内外の大学・博物館関係者の講演や事例紹介、パネルディスカッションを通じて、研究成果の共有と意見交換を行った。小学校教員養成課程支援をめぐる課題の共通性が明らかになったとともに、教員のライフサイクルを通じて博物館が担う役割について検討する必要性も示唆された。
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