本年度は以下の2項目について成果を取りまとめた。 (1)オンライン学習による学習理解の評価 オンライン学習では、オンラインテスト作成の都合から、選択式のテストがほとんどであり、小論文形式のテストはあまり行われない。オンライン学習で選択式テスト回答と小論文形式の回答にどの程度の違いがあるかを調べた。 対象授業は、学部と大学院で開講されたブレンディッド型の授業と、フルオンラインで開講された学部の授業であった。いずれも小論文形式と選択式回答のテストを実施した。小論文の評価は、この講義に関与しなかった専門家2名によって、評価項目を決めて評定した。また、コンピュータによる小論文の自動評価システムも利用して評価した。 その結果、専門家の評価では学部と大学院の間では全体の評価点に差は見られなかった。また、学部のブレンディッド型とフルオンラインの間でも差がなく、授業形式による影響が小さいことを確認した。一方の自動採点では、文章表現の観点で大学院の評価得点が高くなった。自動評価の下位得点と専門家の評価点の関係を調べると、専門家は「論理構成」の観点で評価していることが明らかになった。 (2)学習者特性と学習行動の関係 オンライン学習を利用する授業の受講者について、性格、思考スタイル、情報リテラシーなどの学習者特性と授業での行動指標、学習成果について、継続的に調査を行った。調査年度や学部と大学院の違いを明らかにするために、3年度分について総合的な分析を行った。その結果、学部と大学院ではオンライン学習の「教材評価」の評価要因が学習成果に与える影響が有意に異なった。また、3年間の変動も学部と大学院で異なっており、これらの要因を考慮したオンライン学習の運営や学生支援が必要なことを明らかにした。さらに、米国においても、研究協力者によってオンライン学習での学習者特性の影響を検討し、日本の結果との比較を行った。
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