研究課題/領域番号 |
19300298
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
木島 隆康 東京芸術大学, 美術研究科, 教授 (10345340)
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研究分担者 |
佐藤 一郎 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (30143639)
工藤 晴也 東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (90323758)
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キーワード | アフガニスタン / バーミヤーン / 壁画修復 / フォーラーディ / 流出文化財 / 文化財難民 / 仏教壁画 / 三軸織り布 |
研究概要 |
対象としている壁画は「流出文化財保護日本委員会」が「文化財難民」として日本で保護しているアフガニスタンのバーミヤーンおよびフォーラーディ遺跡から日本へ流出してきた仏教壁画片である。近年の調査で5〜9世紀作とされた。これらは在りし日のバーミヤーン仏教芸術を今に伝える数少ない貴重な文化遺産である。これらの壁画は藁スサを混ぜた土壁層上に水性絵具(最近、油性の可能性も指摘されている)で描かれ、きわめて脆い構造体である。これらの壁画片を毎年10点前後選択し、詳細な調査と修復を実施してきた。平成19年度は7点、平成20年度は11点の調査と修復を完了することができた。 状態調査では、各種光学調査(正常光、紫外線・赤外線)を行い、デジタルカメラを中心に据えて調査撮影を行った。さらに、マイクロスコープ顕微鏡の導入によって、100〜1000倍の観察と撮影が可能となり、絵具層表面の調査も実施できた。また、本年度購入した超高精細デジタルカメラ(3900万画素マルチ撮影)は予想以上に性能が優れ、正常光撮影のレベル向上をはかった。 修復作業は調査結果にもとづきながら適切な修復計画を立案、旧額装の解体、旧補強材の取り外し、画面の補強、土塊の強化処置、裏面の補強(三軸織布の裏打ち)、展示を踏まえた適切な額装、修復処置後の撮影を実施した。特に土塊の補強と裏面の補強、さらに額装は処置材料、処置方法を吟味し、社会に向けた理想的な修復方法を提示できたと考える。 レプリカの制作は、平成20年度は前述の調査結果を踏まえ、絵画層を支持する土壁層を中心に再現制作した。結果、バーミヤーン石窟面最下層に塗布されていた牛糞の効果、その上に厚く塗布された藁スサ入りの土壁層が、想像以上に技術的合理性にかない強固であることを具体的に確認することができた。次年度は、今回の支持体の成果を踏まえ、彩色の再現制作を実施する。
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