研究課題/領域番号 |
19300299
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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研究分担者 |
原田 一敏 東京国立博物館, 文化財部, 上席研究員 (20141989)
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (60443420)
清水 康二 奈良県立橿原考古学研究所, 主任研究員 (90250381)
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キーワード | 鉛レス高錫青銅器 / 錫22パーセント / 鋳造・鍛造加工 / 熱間加工 / 韓国伝統金工技法 / サーモグラフ温度測定 / 組織観察 / 硬度試験 |
研究概要 |
古代では錫20%を超える高錫青銅で鏡、武器、楽器を作ったが、鋳造のままではガラスのように脆く、熱処理して改善したという研究がある。Sn23%の模造鏡を焼き入れし出土鏡と比較すると、反り方や割れ方、色調などが異なることが分かった。韓国では現在も鉛レスのSn22%錫の鍮器を熱処理して製作しており、慶北奉化と金泉の3工房で鍮器製作工程を調査した。鍮器は鋳造で形を作る方法と鍛造で作る方法がある。鍛造は約700℃に加熱し650〜500℃の温度域で行われた。また鋳造、鍛造品共に約600℃に加熱して水中に焼き入れし靭性の向上が図られる。韓国鍮器材料を光学顕微鏡ならびにSEMにより組織観察しEPMAを用いて定量分析をした。熱処理前後の相の硬さはマイクロビッカース硬度試験により評価した。試料は2箇所の鍮器工房から入手し、(1)鋳造材を加熱処理ののち打ち抜きしたもの、(2)鋳造材を加熱してプレス成形したのち焼入れしたもの、(3)鋳造材を加熱処理ののち焼入れしたもの、(4)鋳造材(非熱処理品)を調査した。(1)はα相とα+δ共析組織から成り、熱処理後徐冷されたことを示している。(4)も同様の相構成であるが、α相がデンドライト状になっており典型的な鋳造組織であった。一方(2)、(3)ではα相とそれを取り囲むマルテンサイト組織がみられた。この高錫青銅の成分はいずれもSn20〜22wt%程度であった。この合金では586℃以上に加熱すると、α+βの2相共存となる。これを徐冷するとβ相がα+δ共析となり(1)のような組織となるが、焼入れにより急冷すると原子の拡散が起こらず、β相がβ'マルテンサイトになる。それぞれの相について硬さ測定を行なった結果、いずれもα相の硬さは200HV程度であるのに対し、α+δ共析部分は420〜480HVと著しく硬い。それに比べて、マルテンサイト相は340〜390 HVと共析組織よりも硬さが低いことが確認された。
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