研究課題
錫23%で作る韓国鍮器の調査は8月に金泉工房で鋳造鍮器の焼き入れ、居昌工房でスピニング加工の熱間加工と焼き入れ、宝城工房でハンバンチャ(鋳造後の鍛造加工)の熱間加工の各温度をサーモグラフ温度計で測定した。熱処理時の温度分布と冷却速度など、これまで明らかにされていなかった熱処理技法が明らかになった。8月に馬山市の東亜細亜文化財研究院と「高錫青銅青銅器の熱処理技術共同研究」の覚書を交わし、日韓共同研究体制を整えた。同時に高麗、朝鮮時代の高錫青銅器10点の分析資料の分析を委託され、2009年10月に韓国で成果発表を兼ねてシンポジウムを開催することとした。インド南部のケララ州には古くから高錫青銅製品の製作が知られ文化財科学研究者のDr. Sharada Srinivasan氏(National Institute of Advanced Studies)を7月に富山大学に招聘し、本研究の韓国調査の成果発表を兼ねた博士の研究講演会を開催した。2009年2月、インド南部アランムラでは錫33%という、古代からの日中韓の青銅器には見られない超高錫青銅を用いた青銅鏡製作工房2軒を調査した。33%高錫青銅は鍮器の成分よりも遥かに脆弱であり、錫25%の古代高錫青銅鏡や武器、楽器の東アジアにおける高錫青銅熱処理技術の変遷を研究する上で、極めて興味深い研究対象であった。また、本研究チームが23%高錫青銅鏡45面の焼き入れ実験を行った成果との比較も可能で、現代に残された貴重なインドの高錫青銅鏡だが、調査の結果全く熱処理をしない工法であり、古代青銅鏡への熱処理技術研究の重要な成果が得られた。インド南部アレッピーでは錫15%の高錫青銅で作るベル工房を調査し、鋳造方法と熱処理技法の有無を調べた。結果としてこの成分の高錫青銅では焼入れを施さないことが分かった。
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Materials Transactions Vol. 50
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