研究分担者 |
山本 直人 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (60240800)
奥野 充 福岡大学, 理学部, 准教授 (50309887)
増田 公明 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (40173744)
木村 勝彦 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70292448)
南 雅代 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 准教授 (90324392)
|
研究概要 |
14Cウイグルマッチング法による木材の最外年輪年代の推定において,14C年代を測定する年輪数と推定の精度との関係は,必ずしも直線的にはならない.むしろ較正曲線のどの位置に当たるかで,ほぼ精度が決まる.実際,真脇遺跡や青田遺跡発掘の環状木柱列を構成する木材の年代は,較正曲線が平坦になる箇所に当たるため,測定する年輪数を増やしても最外年輪の年代推定の精度を良くすることはできない.また,山梨県の木製仏像ではV字型の箇所に相当し2箇所で高精度の一致があるが,そのどちらかを選別することはできない. 一方,14C年代と暦年代が直線的に変化する箇所では,50年程度離れた2個の年輪を用いて最外年輪の年代を精度良く推定できることが示された.このように,ウイグルマッチング法による高精度年代推定の必要条件は,年輪数や年輪選別など年代測定の実施方法よりもむしろ,木材の暦年代がどこに当たるかで決まることが明らかとなった.もちろん,較正曲線のデコボコは通常数百年のサイクルであるため,年輪数が200個以上ある場合にはこの問題はない.但し,暦年代で750~400cal BCの区間は較正曲線が平坦な箇所であり,年輪数は300個以上必要である. 実資料に適用すると,例えば,遺跡発掘木材に比べて火山性堆積物中の埋没樹木などは,ウイグルマッチング法で推定した年代と噴火年代による予想値などと一致が良くないことがある.資料採取する堆積層序や試料調製法の検討など今後の課題とされる. 一般的な14C年代の較正の精度と同様に,14Cウイグルマッチング法による年代推定精度も較正曲線の正確度・信頼度に依存する.日本産樹木について,国際的に用いられている較正曲線では不適当である暦年代箇所があることが明らかにされている.14Cウイグルマッチング法による高精度年代推定のためには,日本版の較正曲線を整備することが不可欠である.
|