研究課題
土壌や土壌中の水のストロンチウム同位体比(^87Sr/^86Sr)は地質によって異なり、ある土壌・水で生育した植物組織内の^87Sr/^86Sr比、その植物を食した動物や人間の組織内の^87Sr/^86Sr比(食物由来Sr)もその地質情報を反映する。このことを利用し、古代遺跡から出土した古人骨・歯の^87Sr/^86Sr比を測定することにより、その遺跡に埋葬されている人の生育地域(地質)を推定することが可能である。しかし、骨組織のCaはSrと容易に置換するため、古人骨中には、生前の食物由来Srだけではなく、死後、周りの水や土壌から骨に混入した続成由来Srも含まれている。本年度は骨試料の基礎データとなる^14C年代、炭素・窒素同位体比測定のための試料調製法の検討を進めたほか、主に以下の2点について検討を行った。1.地質の^87Sr/^86Sr同位体比と、その地質に生息する動物の^87Sr/^86Sr同位体比の比較琵琶湖、諏訪湖、野尻湖、八郎湖の湖水とブラックバスの骨の^87Sr/^86Sr同位体比はほぼ同じであった。また、愛知県豊田市足助と滋賀県伊吹山に生育する現生動物(猪、鹿)の骨の^87Sr/^86Sr同位体比についても、その動物が生育した地質を代表すると考えられる河川堆積物の^87Sr/^86Sr同位体比とほぼ同じであり、動物の組織内の^87Sr/^86Sr比(食物由来Sr)はその地質情報を反映することが確認された。2.鎌倉由比ヶ浜地域の遺跡から出土した人骨・歯、土壌の^87Sr/^86Sr同位体比測定骨・歯の酢酸可溶成分、酢酸リーチング後の残さ、土壌の^87Sr/^86Sr同位体比の比較を行った。その結果、酸リーチングを行っても、周りの土壌や水から入り込んできた骨中の続成由来Srは完全に除くことができず、他方、歯試料については、食物由来Srの情報を得ることが可能であることが明らかとなった。
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