研究課題
国内の遺跡から出土した古人骨・歯の^<87>Sr/^<86>Sr比から、その遺跡に埋葬されている人の生育地域(地質)を推定するためには、(1)骨が受けている続成作用を適切に見積もって生前の食物由来Srのみの情報を引き出すこと、ならびに、(2)日本全国の地質の^<87>Sr/^<86>Sr比データを作成し、利用できるようにすることが必要である。本年度は、(1)(2)それぞれに対して、以下の研究を実施した。(1)これまでに^<14>C年代測定や炭素・窒素同位体分析、^<87>Sr/^<86>Sr比測定を行なってきた鎌倉由比ヶ浜地域から出土した人骨・歯試料のCa/Sr比を測定し、骨が受けた続成作用の程度を見積もった。その結果、人骨中のSrは続成作用由来がほとんどであり、歯試料については、食物由来Srの情報を得ることが可能であることがわかった。その他、微量の骨試料で^<14>C年代測定や炭素・窒素同位体分析を実現するための基礎研究も行なった。(2)九州内を流れている河川の堆積物約150試料の^<87>Sr/^<86>Sr同位体比測定を行い、九州地域の地質の^<87>Sr/^<86>Sr同位体比マップを作成した。その結果、比較的新しい溶岩が表面に分布する九州北東部を流域とする河川の堆積物はマントル由来のマグマが示す^<87>Sr/^<86>Sr同位体比を示し、九州中部付近の付加体を流域とする河川の堆積物では、複雑な地質構造を反映して^<87>Sr/^<86>Sr同位体比に大きなばらつきが見られた。作成した九州地質^<87>Sr/^<86>Sr同位体比マップを利用し、九州地域で採取した動物骨の^<87>Sr/^<86>Sr同位体比を調べた結果、その動物が生育した地質の^<87>Sr/^<86>Sr同位体比とほぼ一致していた。以上のことから、地質^<87>Sr/^<86>Sr同位体比マップを用いることにより、古代人の歯の^<87>Sr/^<86>Sr同位体比から、その人がどの地域で生育したかが推定可能であることが明らかとなった。
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