研究概要 |
1.前年に行った喜界島の調査結果を,新しい資料を用いて再検討した.すなわち,年代が既知の津波石を利用することにより,その下部に達する石灰岩からなる台座岩の形成速度を再吟味した.その結果,台座岩の形成速度(周辺地表面の低下速度)は,以前報告した速度(205mm/ky)より6%大きい218mm/kyであることがわかった. 2.1と同じ喜界島の台座岩とその上に載る巨礫のいくつかについて,それらの^<14>C年代測定を行った.その結果,台座岩の年代値は,周辺の完新世段丘の離水時期とほぼ同時期であった.また,台座岩の上に載る巨礫については,津波石の可能性があるのは一個だけであり,多くの巨礫は背後の崖から供給されたものではないかと考えられた. 3.^<36>Clの宇宙線生成放射性核種を用いた年代法を用い,日本各地のカルスト地域に形成されているピナクルの溶解速度について検討した.その結果,ピナクルの溶解速度は雨量とは明瞭な相関は認められず,北海道と沖縄で大きく,本州で小さいことが分かった.このことから,基本的には気温の高いほど化学的溶解が進むものの,一方北海度のような寒冷地では,化学的溶解が小さく,そのほかに凍結破砕(物理的風化)の影響を受けていることが予想された.
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