研究概要 |
最初に,既存の資料の分析を行い,主要な研究対象地域として長野県の松本盆地と諏訪盆地の周辺,および北海道の日高地方を選定した.また,比較対象として愛知県小原村,茨城県多賀山地,台湾,およびニュージーランドを選定した.海外の対象地域は,日本と同様に島弧の造山帯に位置し,熱帯性低気圧の影響が強い場所である.上記の日本の対象地域について,デジタル標高モデル,衛星画像,地質データ,土地利用データなどの収集を行い,GISで利用可能なデータベースを構築した.また,日高地方においては,2003年の台風により発生した斜面崩壊3地点において,地形・地質と水文プロセスの相互関係を現地で調査した.その結果,3つの地域で地中水の挙動のタイプが異なっていることが明らかとなり,それが崩壊の密度や規模などの違いをもたらしたことが示唆された.また空中写真判読から,崩壊発生の周期にも場所による違いがあることが示唆された.また,台湾とニュージーランドについては,上流域での崩壊の発生や土砂流出を強く反映する扇状地に関するデータを収集し,規模や傾斜等について日本の扇状地との比較を行った. 気候学的観点から豪雨の変化傾向を分析する基礎作業として,強雨(1時間,24時間)を捕捉するための適切な観測点密度を求める方法を検討した.具体的には,観測点間の距離に伴う降水量比の変化から,観測点の降水量が代表することができる空間範囲を認定した. また,土砂災害に対する地域防災と住民意識を「公助」「共助」「自助」という3つの側面から捉えるための研究を行った.今年度は「公助」に焦点を当て,岡谷市の危機管理室と松本市の総合防災課で聞取りおよび資料収集を行い,行政施策としての防災への取り組みについて調査した.
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