研究概要 |
1)長野県岡谷地区を対象に,レーザ計測で取得した1m解像度の地形データを用いて,斜面上の開析前線を自動抽出する手法を開発した.さらに空中写真判読や現地調査の結果を踏まえて,開析前線と斜面崩壊の分布との関係を分析した.2)日本,台湾,イタリアの扇状地の地形特性を,上流域の地形特性と,そこからの土砂供給と関連づけて検討した.3)茨城県多賀山地および愛知県豊田市の表層崩壊地に,拡散方程式による風化モデルを適用し,土層回復時間を推定した.その結果,風化プロセスは拡散型と側方流型に分類でき,土層回復時間は90〜240年と推定された.4)北海道日高地方で発生した表層崩壊と地中水の挙動との関係について,斜面土層中の水文観測に基づいて検討した.その結果,レキ・砂岩地域において飽和側方流の発生が確認され,これが崩壊密度を高めたと推定された.5)長野県岡谷地区を対象に,公助,共助,自助の3側面からみた総合的な地域防災力について考察した,具体的には,行政の防災担当部署と自治区での聞取りと資料収集,および住民の防災意識に関するアンケート調査を行った.6)自治体や国土交通省,気象庁などによる多数地点の時間降水量資料を用いて,1997〜2005年と1981〜1989年の2期間を対象に,南関東における夏季の強雨の発現頻度を比較した.その結果,日没後から夜半にかけて東京都区部を中心に近年の強雨頻度が高く,局地的な要因による強雨の増加傾向が指摘された.7)大山火山北麓において,扇状地に分布する集落の発達について検討した.河岸の低地からの比高が大きい古期扇状地面よりも,比高の小さい中期扇状地面・新期扇状地面で集落の発達が良いが,比高がより小さい最新期の扇状地では水害・土砂災害を受けやすいために集落の発達が悪いことが判明した.
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