研究課題/領域番号 |
19310007
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
張 勁 富山大学, 大学院・理工学研究部, 教授 (20301822)
|
研究分担者 |
成田 尚史 東海大学, 海洋学部, 准教授 (50250501)
角皆 潤 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (50313367)
|
キーワード | 沿岸海底湧水(SGD) / 淡水 / 栄養塩濃度 / 硝酸 / 利尻島 / サロマ湖 / 熱収支 / 海氷 |
研究概要 |
本研究は、これまで日本沿岸を中心に行われてきた沿岸海底湧水(SGD)の成果を踏まえ、海洋大循環の1/10モデルとされる日本海における淡水・熱収支を明らかし、SGDによる海水沈み込み及び海洋循環への影響解明を目的としている。平成20年度は利尻島・サロマ湖において観測調査を行い、下記の結果が得られた。 1)利尻島における沿岸部陸域湧水とSGDの調査より、下記のことが分かった:(1)水試料中の主要化学成分・トリチウム・CFCs・SF6の濃度及び酸素・水素同位体組成より、沿岸部陸域湧水の大部分と異なり、SGDの殆どが1200m以上の高山地域に起源を置き、陸域湧水を形成している地下水流動系より深い流動経路を持ち、規模も大きい;また、(2)SGDの平均滞留時間は20〜30年と、陸域湧水の5年〜20年に比べより長い;(3)メタン・一酸化二窒素・硝酸イオンなどの濃度・同位体組成から、SGD中の全硝酸イオン中に含まれる大気沈着由来の硝酸イオンは10パーセント程度で、大部分は再生由来の硝酸に置換されている;(4)沿岸の表層海水に比べSGDは栄養塩に富み、温度の季節的変化が小さい。 2)オホーツク海に隣接するサロマ湖での調査では、昨年度同様、海跡湖底層水に低塩分・低酸素水シグナルが夏季を中心に観測された。佐呂間別川と芭露川の河口域における河川水・地下水と、サロマ湖における砂州のワッカ湧水に関する観測および化学成分・同位体組成の結果から、陸域地下水に由来するものと推測した。また、改良型フラックスチャンバー及び温度センサー広域流量計について、高緯度・少湧出量海域における試運行に成功した。これらは、次年度のサロマ湖において、海氷形成へのSGDによる影響を実証する調査に直結する重要な結果となった。
|