平成20年度は富士山の南面を中心に、標高2500mの森林限界から標高3776mまでの永久凍土の分布と植物群落の分布を関連づけて調査を行った。山頂部では設置した永久区内の植物群落の変動を測定した。近年、急速に高等植物の侵入が見られた。主な種類はコタヌキラン、イワノガリヤスのカヤツリグサ科の植物が多く、その他にはイワツメクサ、フジハタザオ、オンタデの実生が多数発見された。このうちオンタデは標高の低い3000m位の草本限界から、上部に侵入したと思われる大型の個体もみられた。 全体に山頂部付近は永久凍土の不連続地域が増加していた。このことは下部の高等植物の侵入と何らかの関係があるものと予想された。 森林限界では先端を構成しているわい性低木群落の上昇がみられた。また、森林限界より上部の構成している草本群落も標高の高い位置に出現していることが測定された。 森林限界の変動では、1978年から1999年の20年間の個体数、胸高断面積の増加量に対して、近年10年間の各々の増加量は初期の20年間よりも大きく増加していた。このことから富士山山頂、南斜面、森林限界におけるモニタリングにより得られた結果は近年の平均気温の上昇と関係し、地球温暖化の傾向に一致していたと考えられた。 平成20年度の結果から山頂の永久凍土層および森林限界の変動は近年の地球温暖化による影響を受けているものと予測された。
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