研究概要 |
本年度は、昨年度から引き続き永久凍土の下限の位置と山頂部の永久凍土の存在場所を推定するため、研究分担者とともに地表から1点につき30cm・50cm・70cmの深さで温度の測定を行った。調査・測定は7月および9月上旬に行った。9月上旬には永久凍土の垂直分布調査を集中的に行った。さらに、地中に設置したデーターロガーを回収し、1年間の地中温度変化のデータを得る事が出来た。 その結果、山頂では設置した永久凍土調査地点で永久凍土が確認された。永久凍土が存在した最も顕著な場所は剣ヶ峰西側の標高3,768mの地点、雷岩北側の3,720m地点、白山北側の3,700m地点であった。これらの地点の地温は通年でほぼ0℃であり、最も暖かい8月においても0℃~2℃の値を示していた。厳冬期においては強風により明らかに積雪が存在しなかった期間もあり、その時間帯は-15℃~-25℃であった。 山頂に生育している植物にとっては積雪の散在は生存するための重要な条件である事が示唆された。永久凍土の垂直分布では、標高3,200m以上で連続的な分布状態に変化が見られた。山頂周辺においても永久凍土の確認ができない地点があり、近年モザイク状の分布になりつつあることが確認された。 夏期に山頂までの植物の分布調査を行った。その結果、山頂では以前の調査では確認できなかった高等植物が数多く存在した。侵入した植物種として、イワツメクサ、イワノガリヤス、コタヌキランおよびオンダテ・イタダリの実生が確認できた。富士山頂での気象データの変動と関連させて本年度の結果を考察した。本年度と過去の調査結果から上述の結果は平均温度の上昇、すなわち地球温暖化と関係していることが予想された。
|