研究概要 |
1ニホンジカ分布に係る行政資料を収集し,GISデータベースを構築した.そして,シカの分布を推定するために最も汎用性が高い出猟記録による目撃資料を用いて,分布拡大推定モデルを構築した. 2 2007年に捕獲しGPSを装着・放逐したシカからデータを回収し,GISを用いてそれぞれの個体のハビタット利用を解析した.その結果,尾根や林道周辺を主な活動場所としていることが明らかになった. 3 123個体についてD-loop領域を解析した結果,徳島県では南日本グループ(Type4)と北日本グループ(Type6・7・8・9)が混在していることが明らかになった.また,9つのハプロタイプ(Type4abc・Type6ab・Type7ab・Type8・Type9)が見られ,その偏りから7つの集団が存在する可能性が示唆された.10のマイクロサテライト遺伝子座の解析からヘテロ接合度HEを求めた結果,0.55〜0.72であり,特にD-loopのハプロタイプが多い集団においてその値は高い傾向にあった。 4狩猟禁止区域である剣山では,ニホンジカの糞(16個)からDNAを抽出し,D-loop領域の塩基配列を調査した.その結果,剣山にはType6abとType7aが存在し,徳島県の北東からと南西からという2つの移動経路を通ってニホンジカが移動している可能性が示唆された. 5行政担当者らとの間で研究会を開催し,GIS-DBやモデルの有用性について意見交換を行った.今後,行政との連携を密にして,構築されたデータベースが施策立案のために用いられるよう働きかけるとともに,NPOとも連携して施策の実施に係るサポート体制を構築していく.
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