本年度は、細胞死か誘導される大線量放射線被曝とほほすべてのゲノム損傷が修復される低線量放射線被曝における細胞応答の違いを明らかにするために、さまざまなゲノム修復蛋白質が放射線照射後に形成する核内ドメインについて、特にリン酸化されたヒストンH2AX(g-H2AX)およびRAD51が形成する核内ドメインの構成因子を中心としてマルチカラー免疫蛍光抗体法を用いて解析した。その結果、低線量放射線被曝では被曝直後からg-H2AXフォーカスにはユビキチン化蛋白質が集積するが、大線量放射線被曝では、照射6時間からユビキチン化蛋白質はg-H2AXフォーカスに集積することが明らかになった。このことは、放射線被曝における初期の細胞核高次構造変化がその後の細胞の運命の決定への関与を示唆する興味深い知見であり、関連する学会等で発表した。 また、放射線照射直後からのゲノム損傷によるクロマチン構造の変化に関連する重要な知見として、ヒストンH2AXとH2AZが損傷クロマチンから放出されることを見いだし、さらにH2AXの放出はアセチル化、ユビキチン化に依存することを明らかにし、Mol Cell Biolに報告した。 また、放射線被曝においても重要な細胞障害である酸化ストレスに対する細胞の応答機構を解明するために、酸化ストレスにより形成されるBach2核内フォーカスの動態を解析し、Bach2のSUMO化修飾がBah2フォーカスの動態制御に関与していることを見出し、Exp Cell Resに報告した。
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