研究課題
東京湾沿岸12地点において、雨天時(大雨翌日)3回、平水時(0mm/日が20日以上続いた日)1回表面海水の採水を行った。試料はろ過後、ろ液を固相抽出し、シリカゲルクロマトグラフイーにより分画・精製し、一部の成分については誘導体化を行った後、合成医薬品13成分(ibuprofen、fenoprofen、naproxen、ketoprofen、diclofenac、mefenamic acid、thymol、triclosan、diethyltoluamide、crotamiton、ethenzamide、propyphenazone、carbamazepine)をGC-MSで同定・定量した。同様にサルファ剤、マクロライド等の抗生物質も高速液体クロマトグラフータンデム質量分析計(LC-MS/MS)で測定した。海水や雨水よる希釈に係わらず越流の寄与を評価するために、保存的に振舞う成分と除去率の高い合成医薬品成分の比を計算した。前者にcrotamiton(除去効率20%)、後者にthymol(同98%)を用い、thymol/crotamiton比を計算した。thymol/crotamiton比は下水処理場放流水中で0.0005-0.02、流入水中で0.08-0.9であり、流入水の値に近い比は、雨天時越流水の寄与が大きいといえる。雨天時の比の範囲は0.006-0.3であり、越流の寄与は地点により異なると考えられた。ポンプ所に近い地点ではこの比は平水時より2桁高く流入水の範囲にあったことから、雨天時越流水の寄与を強く受けていることが示唆された。一方、分流式下水処理区の地点では雨天時と平水時で比がほぼ変わらず、越流の寄与はなかったことが示唆された。近傍の下水処理場が、分流式下水道を採用している為と考えられた。下水処理場流入水、放流水および各地点のthymol/crotamiton比から医薬品の負荷源としての雨天時越流水の寄与率を求めた。この結果、ポンプ所の周辺では、雨天時越流水の寄与率が20-55%と計算された。抗生物質にはついても同様の起源推定指標の使用を試みた。抗生物質の使用量の季節変化が大きいため、雨天時と平水時試料の季節を揃えないと、雨天時越流の寄与を正確に見積ることが難しいことがわかった。
すべて 2008
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Environmental Science & Technology 42