沿岸水域における医薬品・抗生物質の動態に関して東京湾を主なフィールドとして研究を行い、以下の知見を得た。1)河口域においてサルファ剤およびマクロライド系抗生物質の一部は分解・除去を受けず沿岸域へと運ばれ、さらに沿岸水域を数十km に渡り輸送され、外洋へ至っていることが示された。2)合流式下水処理区の沿岸域では?天時越流下水により医薬品が負荷され、トリクロサンやトリクロカルバンのように疎水性の大きな成分は放流口周辺を中心に東京湾に堆積していた。東京湾のいくつかの地点で、堆積物からのトリクロサン、トリクロカルバンの溶出による水棲生物への影響が懸念された。医薬品・抗生物質による汚染は日本だけでなく熱帯アジア水域でも広がっていることが示された。
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