研究概要 |
1、抗菌活性を有する臭素系ハロゲン化合物のうち、hydroxy-およびmethoxy-tetraBDE, dihydroxy-およびdimethoxy-tetrabromobiphenyl(dimethoxy-tetraBB)についてAPCIイオン化LC/MS/MSによる定量法を確立した。本方法を用いて、パラオ産の海綿動物(Dysidae spなど)より、2'-OH-BDE68, 6-OH-BDE47および2,2'-diOH-BB80を検出した。沖縄(石垣島)のイタチザメ肝臓中には、これらのOH体が最大で0.8 ng/g、オオメジロザメの肝臓中には6.2〜8.4 ng/g含まれていた。一方、methoxy体はイタチザメ、カズハゴンドウおよびシャチの脂肪組織にはPBDEより高濃度200-450 ng/gで残留していた。 2、海綿で産生するハロゲン化合物を代謝し、抗菌活性を有する細菌を探索する目的で、パラオ産海綿(12種類)に生存する細菌のスクリーニングを行った。Marine agar培地で培養したコロニーからDNA抽出、PCR法により目的とする配列を増幅し、精製したDNAのダイレクトシーケンシングから16S rRNA解析による細菌を分類し、bromoperoxidaseをコードする配列の存在を検討した。コロニーからganmma proteobacteriumなどが認められた。本研究手法はOH-PBDEなど臭素系ハロゲン化合物の産生菌の探索の手がかりとなり、海綿種を増やして探索中である。 3、日本人母乳中の臭素系ハロゲン化合物の定性、定量分析を行った。京都大学生体試料バンクより得られた日本人母乳60試料すべてから、残留PBDEsと同レベルのmethoxy-BDEが2種、dimethoxy-tetraBBが1種、halogenated bipyrrolesが2種検出された。それらの濃度はPBDE異性体と同レベルで残留し、それらは海産物の食事に由来すると考えられる。
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