研究概要 |
脱塩素化集積物TUT2264の塩素化エテン類に対する還元的脱塩素化能の特性評価を行った。まず,これら集積物のクロロエテン類脱塩素化能を調べるため,PCE,TCE,ジクロロエテン類(DCEs)およびビニルクロライド(VC)を初期濃度が約10μMとなる様に添加し,経時的にヘッドスペースの気体をガスクロマトグラフィーで測定した。集積物の細菌群集構造を調べるため,16S rRNA遺伝子(16S rDNA)を標的とした変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)およびクローンライブラリーを構築し系統学的解析を行った。 集積物TUT2264はPCEをTCEへ完全に脱塩素化し,trans_1,2-DCEおよびcis_1,2-DCEまで脱塩素化することが確認された。群集構造解析の結果,Dehalococcoides細菌群と優占微生物としてAcidaminobacter属細菌の存在が示唆された。還元的脱塩素化類似遺伝子の解析を行ったところ,少なくとも8種類の遺伝子を所有していることが示され,エテン系脱塩素化酵素遺伝子としては新規の遺伝子であった。これまでに分離されたDehalococcoides細菌は16SrDNAの相同性が99%以上である一方で,脱塩素化機能には大きな違いがあることが報告されている。上記2菌株ともPCEを電子受容体としては利用できないことから,新規のDehalococcoides細菌による脱塩素化が示唆された。 電子供与体として添加している水素濃度が脱塩素化速度に及ぼす影響を検討した結果,初期水素濃度が0%の系が最も脱塩素化速度が速く,かつDehalococcoides細菌数が10^6〜10^7cells mL-1で推移した。現在,この系に関し詳細な解析を進めている。 さらに,電子供与体の違いが脱塩素化能に及ぼす影響を評価する一環として,各種有機酸,糖類,アルコール類,およびアミノ酸を添加し,発生する水素濃度を測定した。その結果,発生量は平均して0.38±0.15%mM^<-1>であった。特に,乳酸,アラニンおよびグルタミンからの発生量が多く,それぞれ0.58±0.10%mM^<-1>,0.65±0.049%mM^<-1>および0.47±0.12%mM^<-1>であった。現在,水素発生量と脱塩素化速度との関連性をAcidaminobacter属細菌数とDehalococcoides細菌群数の変化と対応付けながら解析を進めている。
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