研究概要 |
耐火物は粒子径の異なる種々の焼結粒子と空隙とのコンポジット材料であり,粒子の特性と気孔構造によって性能が大きく左右される。本研究では,焼結粒子自体の溶融スラグに対する耐侵食性を高め,これと同時に空隙の低減とミクロ化・密閉化によって溶融スラグの炉壁深部への浸透防止を図るとともに,熱応力の分散を同時に向上させ,耐食性に優れた新規クロムフリー耐火材料を開発する。 本年度は,耐スラグ侵食性の高い材料の設計指針を得るために,物質の塩基性度が耐スラグ侵食性の指標として有効かどうか検討した。塩基性度については,物質の構成元素の電気陰性度から直接算出可能な光学的塩基度と,X線光電子分光測定より求めることができる0ls束縛エネルギーを用いた。既に侵食試験が行われている耐火物の中からMg0-Al_20_3系セラミックスと,さらにZr0_2を10 vol%添加した試料,10Cr_20_3・90Al_20_3を固相法で作製した。また,各試料を構成する単純酸化物についても,プラズマ放電焼結法により高密度で焼結させた。酸化物ガラスについては,0ls束縛エネルギーと光学塩基度の間にはほぼ直線的な相関が得られることが知られているが,今回作製した耐火物においてもガラスと同様の相関が確認できた。これより,耐火物についても0ls束縛エネルギーは塩基度の指標として利用できると言える。簡易的な浸食試験として,ペレット状の耐火物の上にスラグの粉末を乗せ,高温で保持する実験を行った。耐スラグ侵食性と塩基度の間には,概ね良好な相関関係が見られたが,Mg0を含む試料に相関関係からの逸脱が見られた。Mg0を含む試料では,ペレットの深部にまでスラグが侵入していたことから,スラグとの濡れ性を支配する因子の探索が必要と考える。
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