研究概要 |
耐火物は粒子径の異なる種々の焼結粒子と空隙とのコンポジット材料であり,粒子の特性と気孔構造によって性能が大きく左右される。本研究では,焼結粒子自体の溶融スラグに対する耐侵食性を高め,これと同時に空隙の低減とミクロ化・密閉化によって溶融スラグの炉壁深部への浸透防止を図るとともに,熱応力の分散を同時に向上させ,耐食性に優れた新規クロムフリー耐火材料を開発する。 平成19年度は,耐スラグ侵食性の高い材料の設計指針を得るために,物質の塩基性度が耐スラグ侵食性の指標として有効かどうか検討した。塩基性度については,物質の構成元素の電気陰性度から直接箪出可能な光学的塩基度と,X線光電子分光測定より求めることができるO1s束縛ェネルギーを用いた。その結果,O1s束縛エネルギーの方が塩基性度の指標として有効であることが明らかとなった。 平成20年度では,種々の単純酸化物をプラズマ焼結法により作製し,スラグによる侵食過程の解析を行うために,実体顕微鏡観察を行った。その結果,スラグのO1s束縛エネルギーに近い酸化物ほど浸潤深さが小さくなることが明らかとなった。また,種々の非酸化物(sic, si3N4, AIN)を分散させたMgO-A1203耐火物について,スラグ侵食試験を行ったところ,還元雰囲気下ではSiCを添加した耐火物のスラグ侵食性が高いことが明らかとなった。 平成21年度では,単純酸化物の数を増やし,ボタン試験法によるスラグ侵食試験を行った。その結果,スラグのO1s束縛エネルギーに近い酸化物ほど高い耐スラグ侵食性を有する傾向が明白になった。また,Cr203とスラグの反応性が高いことも明らかとなり,Crの溶出による溶融スラグの粘度増加が溶融スラグの浸潤抑制の原因であることが明らかとなった。さらに,ZrO2がCr203と同様の効果を有することを見出した
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