研究概要 |
有機フッ素化合物は界面活性剤やコーティング剤等の様々な用途に用いられてきたが、一部が環境水に残留し、生物中に蓄積していることが報告されている。その典型がペルフルオロアルキルスルホン酸類(パーフルオロアルキルスルホン酸類)とペルフルオロカルボン酸類(パーフルオロカルボン酸類)である。このためこれらの排出削減のために工場廃棄物(排水)を分解・無害化することが急務となっている。しかしながらこれらは非常に安定で,完全分解には約1000℃の高温を必要とする。また,焼却では生成するフッ化水素ガスが焼却炉材を激しく劣化させるという問題がある。このため焼却以外の分解方法の開発が望まれている。本年度はペルフルオロオククン酸(PFOA)に代表されるペルフルオロカルボン酸類について、ペルオキソ二硫酸イオンを酸化剤として密閉容器中で熱水分解させることを検討した。その結果、ペルオキソ二硫酸イオンを添加した場合、意外にも80℃程度の低温の熱水、すなわち温水中で最も迅速にフッ化物イオンと二酸化炭素まで分解できることが分かった。反応温度を150℃に上昇させたところ、PFOAの減少速度は低下し、フッ化物イオンおよび二酸化炭素の生成も大幅に減少した。これは150℃のような高温では硫酸イオンラジカルと水との反応が優先してPFOAとの反応が阻害されるためと考えられる。この方法によりPFOAの代替物として普及しつつあるペルフルオロエーテルカルボン酸類についてもフッ化物イオンと二酸化炭素まで迅速に分解させることができた。さらにこれらについてヘテロポリ酸光触媒による分解も達成した。
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