研究概要 |
未来型エネルギー変換システムとしてのバイオ電池について,直接電子移動(DET)型生体触媒機能電極反応の熱力学的および速度論的な基礎研究を展開し,バイオ電池の技術基盤を確立することを目的とし,主に,以下の3点について成果が得られた. (1)直接電子移動(DET)型のバイオカソードとして,マルチ銅酵素を触媒とする三相界面構造を構築することを目的として,炭素の種類とバインダーの種類,およびそれらの混合比などを綿密に調べた.さらに緩衝液濃度の最適化を行い,定常的電流密度に10mA/cm2を実現した. (2)高分子化条件の検討により,酵素の大きさ程度の細孔を有する種々の炭素を調整することに成功した.またその細孔を制御する方法も見出した.これにより,酵素の数倍程度の細孔が適切であることがわかった. (3)電気二重層の電場と酵素の相互作用により,酵素が失活することを示し,表面修飾により本効果を弱めることに成功した. (4)DET型微生物機能電極反応と言われてきた反応系について,電気化学挙動を精査した結果,微生物が産生する酸化還元物質が,メディエータとなっていることを明らかにした.また,培養液中から,酸化還元物質としてのキノンとフラビンを同定した.さらに,特定の微生物電池アノードでは好気条件の方が,電流密度が大きくなることを示した.これらの知見は,微生物-電極間の電子移動反応を制御する方針を導く礎となる.
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