研究課題/領域番号 |
19310071
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉田 博基 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50186491)
|
研究分担者 |
根本 隆 京都大学, 化学研究所, 助教 (20293946)
小川 哲也 京都大学, 化学研究所, 助教 (40224109)
磯田 正二 京都大学, 化学研究所, 教授 (00168288)
|
キーワード | 電子顕微鏡 / 球面収差補正 / 電子エネルギー損失分光 / 界面 / 欠陥 / ナノ計測 |
研究概要 |
本年度は走査型透過電子顕微鏡で原子分解能像を観察しながら、電子プローブを特定原子サイトに入射し電子エネルギー損失分光法により内殻電子励起スペクトルを計測するサイト分解EELS法の開発と応用を行った。それにより、以下の二種の遷移金属酸化物薄膜に対して局所構造の歪みや対称性の違いによる電子構造変化を明らかにした。 1.層状ダブルペロブスカイト構造のLa2SnCuO6薄膜に適用し、CuO6とSnO6八面体から独立に酸素K殻電子励起による吸収端微細構造を計測し、局所電子構造の違いを明らかにした。CuO6八面体近傍からのスペクトルではCuの3d軌道と混成した酸素2p軌道への遷移に帰属されるプレピーク構造を検出し、Cu-3dホールの軌道対称性を明らかにした。これはヤーン・テラー歪みによる電子構造変化を原子分解能レベルで捉えたものである。また、SnO6八面体近傍の電子構造はイオン結合性が強くスペクトルの微細構造に内殻空孔効果が顕著に表れることを明らかにした。 2.Brownmillerite構造を有するSrFeO2.5およびCaFeO2.5薄膜についてサイト分解EELS法を適用し、単位胞内に存在するFeO6八面体とFeO4四面体における局所電子構造の違いを明らかにした。両サイトから測定された酸素K殻電子励起の微細構造の解析から、FeO4四面体はFeO6八面体に比べ共有結合性が強いことが明らかになった。また、FeO6八面体から測定されたスペクトルのプレピーク構造は、Aサイト原子の違いにより僅かに異なり、酸素欠損による八面体の歪みの違いに帰属できることが明らかになった。
|