研究課題
任意機能を持つナノ構造体を設計・形成するには、1)機能の起源、2)機能の発現機構、および3)ナノ構造体の形成機構、を解明する必要があります。その解明に必要な、個々のナノ構造体の形状・構造・組成と形成過程の評価およびそのナノ構造体の物理的特性などの直接的評価を目指し、透過電子顕微鏡内での局在近接場分光装置の開発を進めました。平成21年度の主な成果は、酸化亜鉛結晶中に高温で導入されたらせん転位(1次元ナノ構造体の一種)の電子状態その場評価に初めて成功したことです。透過電子顕微鏡内での高輝度光照射により、転位がすべり運動を生じることが見出されました。すべり運動はエネルギーが2.48-2.61eVの光を照射すると生じることから、この転位はバンドギャップ中に深さ2.48-2.61eVの局在電子準位を持ち、この準位を介した共鳴光吸収によって得たエネルギーをもちいて運動する、と結論されました。計画していた高い空間分解での分光測定は研究期間中には達成できませんでしたが、本研究の目的である、個々のナノ構造体の原子構造と電子状態の直接同時評価に本研究手法が適用できることが示されました。また、幾つかの派生的研究成果も得られました。本研究は電子顕微鏡内で走査トンネル顕微鏡法を併用しますが、その探針で炭化シリコンナノワイヤー(半導体)やシリコンナノチェーンー(絶縁体)に電流を流すとカーボンナノチューブ(金属)へ変換されることが見出されました。ワイヤーに付随する炭素を原料としてワイヤー表面にナノチューブが形成され、ワイヤー自身はジュール熱によって蒸発することで変換が生じる、と説明されました。本成果は、絶縁体から伝導体までナノ構造体の電気特性を局所的に変化させる新しい手法を提案しています。
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Journal of Electron Microscopy (未定, 掲載確定)
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