研究課題/領域番号 |
19310077
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹哉 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20162448)
|
研究分担者 |
牧 英之 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (10339715)
篠原 武尚 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用部門, 博士研究員 (90425629)
影島 博之 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 主任研究員 (70374072)
栄長 泰明 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00322066)
|
キーワード | 4d / 5d遷移金属 / 非磁性-強磁性転移 / 電子構造計算 / 金属ナノ粒子 / 電界印加誘起強磁性 / 光誘起強磁性 |
研究概要 |
強磁性寸前の金属と位置づけられるPd、Ptなどの4d/5d遷移金属では微細構造を利用して外的に磁性を操作することが可能であると考えられる。この新たな原理に基づく磁気デバイスの開発を目的とした基礎研究を遂行する。 アルカンチオールでコートされた粒径2~7nmのPtナノ粒子を化学的手法で作成し、その磁性を磁気測定、X線磁気円二色性、X線吸収スペクトルおよび電子スピン共鳴により調べた。この結果、すべてのナノ粒子でPt原子の偏極による強磁性が発現した。この強磁性の起源はアルカンチオールと粒子の間での電荷移動に伴って5dバンドのホール数が増大することに起因することが分かった。これは表面修飾する分子を変化させることでPtナノ粒子の磁性を制御できること示す。これを踏まえて、光異性化に伴ってトランスとシス状態の間で幾何構造を変化させることができるアゾベンゼン派生物配位子でコートしたPtナノ粒子を作成、紫外光と可視光を照射して磁性の変化を調べた。この状態変化に伴い電気双極子モーメントが変化することで電荷移動量にも変化が生じると考えられる。しかし、磁化の明確な変化を観測することはできなかった。一方、Pd薄膜に対して、電解液中で電気二重層を用いて強い電界を印加してファラデー効果を利用して磁性の変化を調べた。この場合にも強磁性の発現を明確に検出するには至らなかった。さらに、電子構造計算を用いてPt薄膜の磁性を検討した。強磁性モーメントの出現が認められ、その大きさは原子層数に依存して振動的に変化した。(100)配向膜と(111)配向膜とで振動的挙動と関連するバンドが異なることが分かった。 以上より、実験的に非磁性から強磁性の転移を引き起こす外的操作を実現することはできなかったが、粒子表面の分子吸着および薄膜に対する電界印加により目的が達成できる可能性が見出された。
|