研究概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)は、円筒形の立体構造として様々ならせん構造を持ち、またその構造に依存して電気的性質が変化するという著しい特徴を持っている。高い強度、電気伝導性、熱伝導性など、従来の材料にみられない優れた特性を持つため、現在ナノテクノロジーを支える中心的な素材として世界的な注目を集めており、多様な製品への応用が期待される。CNTは様々な特性を制御することがいまだに困難であるにも係わらず、やはりその微細な構造は応用へ魅了してやまない。従来、CNTの配置制御は偶発的な方法により行われることが多かったが、しかし、我々はこれまでの研究により、電気泳動法を利用することで、簡単かつ再現性の極めて高いCNTの配置制御プロセスの開発に成功した。そこで、本研究の目的は我々が開発に成功した電気泳動法によるCNT制御技術により、高純度・高配向性を持っCNT束とポリマーの複合化を行い、導電性かつ高強度を持つ新型導電性プラスチック材料や強化材料の応用を展開することである。 今年度の実績として、我々は2層液電極技術を用い、表面分散剤を添加することなどにより、電気泳動法を用いて、カーボンナノチューブ分散液から、カーボンナノチューブが相互に密着し、結晶状に方向の揃ったファイバを作製することに成功した。このファイバの弾性率は、265GPaで、これは世界のチャンピオンデータである。電気泳動法による高性能カーボンナノチューブファイバの実用化を目指して、長尺ファイバ作製法を開発し、エンドレスのファイバを作製できる技術としている。また、CNTファイバプロセスの制御によって作製したCNTファイバはグラファイトの電気的な性質と類似し、かつハイキャパシタンスCNTファイバ(150F/g)の作製に成功した。従来の同様なCNTファイバのキャパシタンス20-44F/gと比べて、遥かに向上した。単層CNT単体のキャパシタンスは180F/gであることから、我々が作製したCNTファイバはCNT単体の特性が十分生かされている。その結果、英文誌に発表した。(Nano 3(11),3679(2009))。さらに、ポリマーの被覆によって、絶縁性を得るプロセスの制御を進めている。
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