研究概要 |
MEMSピンセットに原子間力センシング機能を付加するため,MEMSピンセットの一方のアームを駆動する櫛歯型アクチュエータを自励振動させる技術,及びその振幅を制御する技術を開発した。自励発振回路は,オペアンプ2つからなる極めて簡単な回路で,そのゲインを調整することにより,櫛歯アクチュエータの自励振動振幅を制御することができる。この機構を用いて原子間力センシング実験を行ったところ,通常の原子の原子間力顕微鏡と同様に,ナノオーダーの凹凸像が取得できることが分かった。また,水中でのセンシングを可能とするため,自励振動により変位計測するMEMS振動子と,溶液中に挿入して細胞等を把持するピンセットアームを練成させる構造を開発した。さらにこのピンセットデバイスをモデリングし等価回路表現することで回路シミュレーションを実施し,変位検出用振動子が自励発振することを理論的に確認した。これにより溶液中においても同様の手法でハンドリング検出できる構成とすることができた。実際に溶液中でナノパーオィクルのハンドリングを行ったところ,顕微鏡視野において把持することができるようになった。さらに把持検出の感度を向上するため,櫛歯電極の形状を台形状に変更し,平行平板型アクチュエータの特性を併せ持つ櫛歯アクチュエータを作製した。さらに理論解析り結果,台形型櫛歯アクチュエータでは,電気、機械結合係数が,通常の方形型櫛歯アクチュエータに比較して数倍から数十倍に拡大されることが分かった。これにより,自励発振が低直流バイアスで可能になった。現在感度について評価している。また計画にはなかったが,細胞表面の電位計測のための電気化学プローブを開発した。このプローブと本ハンドリングシステムを融合し,細胞の電気化学計測システムへと展開する予定である。
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