柔軟物質を把持するためのMEMSピンセットの開発と細胞把持実験を行った。柔軟物質を把持するために、MEMS振動を利用した原子間力検出機構をMEMSピンセットに付加した。プローブは増幅器を用いた正帰還ループによる自励発振機構により駆動されてプローブの有する固有振動数で振動し、プローブに原子間力等の外力が印加されるとその共振周波数あるいは振幅が変化することを利用して物質の把持を検出する。まず大気中における微小物質の把持実験を実施し、数μmの磁性体物質をプローブの接触により動かすことなく、プローブの接近を検出することが可能であることが分った。大気中においては、プローブの物質への接触と把持などの信号を得ることができたが、溶液中においては振動による検出を利用できないため、櫛歯電極の容量変化によるプローブ変位検出を行った。次に細胞等の生体物質との親和性を考慮して、パリレンをプローブに被覆する実験を行った。パリレンはパリレンCを150度で蒸着した。パリレンを被覆した状態においても、MEMSピンセットが動作することが検証された。以上のように開発したMEMSピンセットを用いて、細胞の把持実験を実施した。しかし、基板上に張り付いている細胞に対しては、MEMSピンセットの把持力が十分大きくないことが分かった。大気中においては柔軟な把持が可能であり、把持信号を基に、そこから更に印加する電圧によって把持力を制御することができた。
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