研究概要 |
本研究はMEMS技術を援用し,蚊の針を模倣した低侵襲マイクロニードルの開発を行う.前年度,高速度カメラと拡大光学系を用いて蚊の穿刺行動を詳細に観察し,蚊の口器が複数の微小な器官から構成され,これら各器官が協調動作しながら穿刺が行われることを明らかにした.H20年度は,シリコンマイクロマシンニングにより蚊の口器構造や穿刺行動に基づいた微細針の作製に注力し,以下の成果を得た. 1蚊の口器構造を模擬し,3本のマイクロニードルから構成される複合針を提案し,その穿刺力低減効果をFEMシミュレーション(静的解析)により確認した. 2提案した複合微細針を設計・製作し,これとPZTアクチュエータと組み合わせることで,各微細針を独立に振動駆動できる穿刺デバイスを実現した. 3蚊の観察結果に基づいて,各微細針に位相差を持たせて協調させながらシリコンゴムへ穿刺し,その際の抵抗力を測定した.その結果,協調動作による刺入方法が穿刺力の低減に効果があることを確認した. 4電解エッチングの手法により3次元的に尖鋭化したシリコンニードルの作製に成功した.尖鋭化した針では,2次元的に鋭い針に比べて穿刺力が大幅に低減することを確認した.実際に人体皮膚へ穿刺を行い,出血させることに成功した. 最終年度は,動的なFEMシミュレーションにより,微細針の刺入に伴う皮膚組織の変形・破壊について詳細な検討を行う予定である,また蚊の針がキチン質の材料であることを模擬し,マイクロモールディング法によりポリマー製複合微細針の製作・評価を行う予定である.
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