直径が数μm程度の微小球を1次元のワイヤ状に数千個、配列することで光導波路とし、その内部を伝播する光の特性を、近接場光学顕微鏡を用いてナノスケールの空間分解能で観察を行った。平成20年度は、第1に、二探針近接場光学顕微鏡技術の確立を目指した。前年度の予備実験から、二探針近接場光学顕微鏡では二つの探針が独立して懸架されているため、外部からの振動の影響が大きいことが判明していた。そこで、本年度、低ノイズ除振台を導入し、探針制御に与えないレベルまで振動を抑えることに成功した。 第2に、光集積回路上での光配線を行う時に必要となる「直角曲がり部」を有する、より複雑なフォトニックワイヤ構造の開発を行い、その内部の伝播特性を調べた。具体的には、リソグラフィ法を用いてパターニングを行ったSi基板を鋳型として、コロイド溶液中の自己組織化プロセスを用いて微小球を正確な位置に配列した。その内部伝播光を近接場光学顕微鏡で測定したところ、水平に周回するWhispering-gallery modes(WGMs)の光のうち、特に、Transverse Magneticモードが強く伝播していることがわかった。さらに、直角の位置にある微小球に分岐・伝播してきた光のスペクトルは、分岐前と比べていくつかあるWGMsピークの相対強度が異なっており、「マイクロ分波器」としての機能を有することを見いだした。詳細については、すでにOptics Letters誌にて出版され、報告を行ったので、参照されたい(研究発表、雑誌論文1)。また、この結果については計算機シミュレーションとの比較を行い、定性的説明ができるまでに至った(研究発表、学会発表3)。
|