研究概要 |
(1)研究の目的 経済社会のシステムを運用するに当たって、その性能を確保することは第1の目的であるが、同時に固有のリスクを分析し、これを制御することも求められている。これまで,不確実性下の意思決定、リスク分析に関してさまざまなアプローチがなされているが,複雑系理論からのアプローチは極めて少ないのが現状である。 (2)本研究の背景と手法 本研究では複雑系の理論を基礎として「不確実性の新しい概念」を提案し、システムリスク制御の具体的方法を示すことを目的としている。これまでのリスク分析の主要なテーマは「不確実性」であり、予測不能な変動要因をどのように定式化す。このような不確実性や緩やかな変動要因では記述できない現象が実際に多数出現することが、大きな問題となっていることが確認され、リスク分析におけるアプローチや、解析手法の大幅な変更を迫るものとなっている。 (3)研究の独自性 その1つが、多様な変動要因の出現であり、ジャンプ状の変動を含む確率過程・拡散過程(Diffusion Process)の導入である。あるいは定常的には無視できる範囲でありながら、一度発生すると重大な事態を引き起こす事象(Rare Event)である。例えば、欧米の電力自由市場におけるオークション価格においては、定常時の20倍にもおよぶ価格のジャンプが観測され、市場を乱す原因になっており、工場の火災、金融機関における大規模損失など、ジャンプ状の変動を含む確率過程を考慮する必要がでてきている。
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