研究概要 |
宇宙で人間が経験する重力環境は微小重力だけにとどまらない. 例えば月や火星では, 地球上の重力の1/6や1/3という低重力環境を人間は経験する. また, 地球から宇宙へロケットで行く場合, ロケット打ち上げ時に地上での重力よりも大きな高重力場を経験する. そのため宇宙環境利用における火災安全性の確立のためには, 微小重力環境だけでなく低重力環境や高重力環境での燃焼現象の把握が必要となる. そこで本研究は, 高・低重力環境を形成できる落下塔実験装置を製作し, それを用いて各重力環境での燃え拡がり現象を検討することを目的とする. 平成20年度で完成した落下塔は, 落下試験距離約8m, 低重力実験時間は1秒以上となっている. 落下塔は, 制動をかけて落下させることによって, 低重力場を形成できる. 落下ラックへの制動のタイミングはコンピュータ上のプログラムによって制御できるようになっている. 平成21年度は, この落下塔を用いて低重力場及び高重力場におけるろ紙またセロファンに関する燃え拡がり現象について, 実験を行い重力場の変化による火炎伝播現象の違いを明らかにする. また微小重力に関しては, 平成20年度は, 日本無重量総合研究所の落下塔を利用して微小重力場でのろ紙の燃え拡がり限界酸素濃度と酸化剤流速との関係を調べ, その燃え拡がり限界マップを完成させた. この燃え拡がりマップにより, 宇宙船内の酸素濃度に合わせた火災消火法の検討が可能となる. 更に, ろ紙に比べて燃え拡がり速度が2〜3倍程度大きいセロファンを用いて, ろ紙と同様の燃え拡がりマップの作成に着手している.
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