研究概要 |
宇宙・開発の進展に伴い人類は,月や火星では地球の通常重力(1G)の1/6や1/3の値となる低重力環境を経験し,また宇宙へ行く場合,ロケット打ち上げ時に地球の重力よりも大きな高重力環境(1G以上)を経験する.そのため宇宙環境利用における火災安全性の確立は,宇宙空間の微小重力環境だけでなく低重力や高重力環境での燃焼現象の把握が重要となる.そこで本研究は,高・低重力環境を形成できる落下塔実験装置を製作し,それを用いて各重力環境での燃え拡がり現象を検討することを目的としている.平成21年度は落下塔を用いて~1/2Gまでの低重力環境を形成し,3つの燃焼現象について主に検討を行った.1つはロウソクの火炎で,低重力へと変化することで火炎高さが1Gに比較して減少することがわかった.2つめは,エタノールを用いて形成したプール火災で生じるフリッカリング周波数への重力の影響について検討した.その結果,重力が低下することで,フリッカリング周波数も減少することがわかった.また,その振動するプール上の火炎の平均的な火炎高さは重力の減少と供に小さくなることが分かった.3つめは,ろ紙上を伝播する火炎の低重力環境での伝播速度の測定を行った.その結果,ろ紙の伝播速度は重力の減少に伴い,これも減少することが分かった.また微小重力環境での実験に関しては,平成21年度は,日本無重量総合研究所の落下塔を利用してろ紙の燃え拡がり火炎が消炎する条件である限界酸素濃度へのろ紙幅の影響について検討し,火炎の幅が大きくなると微小重力・低流速環境では,火炎は小さな火炎片へと分離し,火炎の体積に比して表面積を増大させて酸素の取り込みを維持するように振る舞い,その結果,燃え拡がり限界マップの形がろ紙幅によって変化することを明らかにした.
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