国境を越える可能性のある海洋汚染問題への取り組みについて、特にフィンランド湾およびバルト海沿岸諸国の状況について調査を行った。フィンランド湾については、フィンランド・エストニア・ロシアの3カ国が協働し、GOFREP (Gulf Of Finland REport)による無線通報システムと船舶の位置を関係国間で共有するための情報ネットワークを構築し、事故防止に向けた取り組みが実践されている。その中で重要な役割を果たしているのがAIS (Auto-matic Identification System)である。この仕組は元々、船舶同士の航行位置を互いに確認し合うことで事故防止を図るものであるが、フィランド湾においては、関係国の海事管理当局がAIS信号を傍受し、各国間で船舶の位置情報を共有することで、他国の領海内にある船舶であっても危険を察知した関係国が当該船舶に対して警報等を与えるための国際間で協調したシステムを構築していることが明らかとなった。 また、AIS信号は沿岸部であればどこでも傍受が可能であるため、実際に稼働が開始されたサハリンII石油・天然ガス開発プロジェクトにより輸出が開始されている宗谷海峡・アニバ湾内を航行するタンカーの航行実態を明らかにするためにAIS受信局を北海道稚内市・稚内漁協岬支部に設置した。現在、そのデータの蓄積を行っている段階であるが、初期の計画通り順調にデータの取得が進んでいる。AISデータは特殊な暗号化を施された状態で送信されているため、信号を複合化させた上でESI地図上に表示するためのシステムの開発を併せて行った。
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