研究概要 |
首都圏でのやや長周期地震動評価のための深部地盤構造のモデル化のための基礎的データを収集するために,微動アレイ観測を20地点で実施した.これらの観測点は,北関東や房総半島東部の既存の地下構造データが少ない地域にある.アレイ観測記録に対して周波数-波数スペクトル解析を行い,レイリー波の位相速度を求めた.さらに,そのレイリー波の位相速度の逆解析によって地震基盤までの1次元S波速度構造を推定した.なお,逆解析では,山中(2007)による新しい逆解析方法を用いた.その結果を既存のモデル(山中・山田,2006)と比較し,既存のモデルの問題点を指摘した.基盤深度を比較すると,今回の結果のほうが,既往の結果に比べて深くなっている.とくに,平野端部の基盤が浅い部分での深度に2倍以上の差異があることがわかった.これは,既存の地下構造のモデル化では,地下構造データが少ない場合には外挿によってスムーズなモデルにされていることが原因であると考えられる. 地震観測記録のP波初動部分の波形を用いて,レシーバー関数を評価した.さらに,各地震観測点付近で微動アレイ観測によるレイリー波の位相速度との同時逆解析を行い,深部地盤の1次元S波速度構造モデルを推定した.上記の微動アレイ観測に基づく既往の研究結果と比べると,今回のモデルでは基盤深度がより深くなっていることがわかった.微動アレイ観測によるレイリー波の位相速度データが長周期帯域で得られていないために,逆解析時に深い部分でのS波速度に不確かさが生じていることが原因であると考えられる. 以上の結果を踏まえて,首都圏の3次元モデルを再構築する必要があることを指摘した.
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