研究概要 |
昨年度に引き続き,首都圏でのやや長周期地震動評価のための深部地盤構造のモデル化のために,微動探査を2地点で実施し、既往の探査結果と統合し、3次元地盤モデルの修正を行った。さらに、中小地震による長周期地震動のシミュレーションを行った。既往のモデルに比べて、観測された地震動の継続時間をよりよく再現することができた。 さらに、首都圏における16地点で微動の連続観測も継続して行った。200日程度の間に得られた微動の連続データに対して地震波干渉法を適用し,各観測点ペアの間のグリーン関数を求めた。さらに、それらから表面波の群速度を推定した。平野中心部で得られた群速度は,既往の地盤モデルに対する理論値で説明できた。しかし、海域や山地などを挟む2観測点間では、既往の地盤モデルでは表面波の分散性状を説明できず、こうした地域での地盤モデルには、修正が必要であることがわかった。これらの結果は、地震波干渉法が地盤モデルの妥当性の検証には有効な方法となりうることを示している。 首都圏での地震観測記録を用いて、比較的短周期の地盤増幅特性を評価し、その逆解析から表層と深部地盤の両者をつなぐ地盤モデルを推定する方法を提案した。従来は、表層と深部地盤は分けてモデル化されていたが、この考え方によってシームレス地盤モデルを作ることができることを示した。 さらに、表層地盤が長周期地震動評価に及ぼす影響を数値計算によって検討した。検討では、差分法に基づく並列計算アルゴリズムを用いて、表層地盤も含めた3次元地盤モデルでの波動伝播をシミュレーションした。その結果、表層地盤が非常に厚い地域では、その影響は周期1~2秒の帯域まで及び、長周期地震動の評価で無視できないことを明らかにした。
|