岩手・宮城内陸地震と中国・四川大地震による地すべりについてすべり面液状化が発生する条件について京都大学防災研究所で開発した地震時地すべり再現試験機を用いて実験を実施した.特に荒砥沢地すべりは見かけの摩擦角が1度程度と従来の地すべりと比べても異常に低いことが研究者の間で謎となっていたが、このほぼ水平すべり面で高速運動が発生したメカニズムについて現地で採取した二種類の試料について実験的に調べた。その結果、(1)現地の地震計で観測された地震動波形を用いて推定した強震動条件を与えたところ完全飽和試料でも高速長距離運動は発生し得ないが、(2)速度制御試験における定常状態時のせん断抵抗が相当程度低下すること、および定常状態のせん断抵抗は一般に初期垂直応力に依存しないことから、荒砥沢地すべりのすべり面深度では見かけの摩擦角が1度以下になることを見いだし、大規模地すべりではある程度不飽和条件でも相当な長距離運動しうることを見いだした。 現地調査では岩手宮城内陸地震による土砂災害、海外の地震豪雨複合斜面災害地として四川大地震後の豪雨により多発した地すべり地、インドネシア・パダン地震による地すべり多発地帯、エルサルバドル沖地震後の豪雨で多発した地すべりなど、都市域近傍の山地斜面で発生した大規模な斜面災害について資料収集、現地調査を実施した.また研究成果を(社)日本地すべり学会研究発表会(8月)、土砂災害の予知・軽減新技術に関するアジア・太平洋シンポジウム(11月)で発表した他、フランス・パリ(11月)で開催された国際斜面災害研究機構(ICL)の会議、米国地球物理学連合大会(12月)、欧州地球物理学連合大会(2010年5月)で紹介した。
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