研究概要 |
我々は始原菌のType III Rubiscoが全く新しい触媒活性を示す2種の新酵素AMP phosphorylase (DeoA)およびribose-1, 5-bisphosphate isomerase (E2b2)とともにAMPの分解に関わる新規代謝経路を構成し得ることを明らかにした。DeoAおよびType III Rubiscoの破壊株を作製し、様々な培養条件における形質を評価することにより、この代謝経路の生理的意義の解明を目指した。まず3種の遺伝子がnucleoside代謝に関与すると考え、培地へのnucleosideの添加の有無の違いによるtranscriptome解析を行った。その結果、nucleoside添加時にはDeoA、E2b2、Rubisco遺伝子の転写産物が増加していることが観察された。宿主細胞と2種の破壊株をnucleoside添加培地で培養した結果、宿主細胞の細胞収率がnucleosideの添加に応じて増加したのに対して、破壊株の細胞収率がnucleosideの添加にかかわらず細胞収率が一定のままであった。したがって、本代謝系は少なくともnucleosideの資化に関与することが明らかとなった。 Glyceraldehyde 3-phosphate (GAP)と3-phosphoglycerate (3-PGA)との間の変換は従来の生物ではリン酸化を伴うGAP dehydrogenase (GAPDH)と3-PGA kinase (PGK)によって可逆的に相互変換されている。しかしながら、T. kodakaraensisのゲノム上にはGAPDH、PGKの他にリン酸化を伴わないGAP dehydrogenase (GAPN)、 GAP oxidoreductase (GAPOR)の遺伝子も存在し、GAPと3-PGAを結ぶ経路が3種存在することが示唆された。これらの経路の生理的機能を解明するため、個々の遺伝子の破壊を試みた。GAPDH遺伝子破壊株、PGK遺伝子破壊株ともに解糖系の機能が必要な培地では宿主株と同等な生育を示し、これらの酵素は解糖に関与しない結果が得られた。一方、糖を含まない培養条件ではこれら2種の破壊株は全く生育できなかったことから、GAPDH、PGKは本菌の糖新生に必須であることが判明した。今後GAPN、GAPOR破壊株の生育特性を評価することにより、これら3経路の生理的意義をさらに解明していきたいと考えている。
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