<UPATrap技術の最適化> UPATrap技術の最適化を目的として、人工的なタンパク翻訳の誘発に依存しない、新しいNMD抑制技術の開発を行った。具体的には、NMDを誘発するモデルコンストラクトをベースにし、プラスミドにコードされたタンパク質(EGFP)の終止コドンと、その下流に位置するイントロンの間に、いくつかの候補遺伝子断片(RNAとして高度な二次構造を形成し、かつ、人工的なタンパク翻訳を誘発しないもの)を挿入し、GC-richな巨大ステムループ配列が、最も効率良くNMDを抑制することを確認した。選別したこの塩基配列をトラップベクター(レトロウイルス型)に組み込み、ウイルス・タイターが上昇することを確認し、マウスES細胞株を用いた遺伝子トラップ実験を行った。その結果、UPATrap法(第一世代)と同様に、NMD抑制型の遺伝子トラップが達成されたことが判明した。 <UPATrap技術のコンディショナル化> UPATrap技術のコンディショナル化を達成するため、複数の相同組換え酵素認識配列をベクターの内部に挿入した。具体的には、相同組換え酵素Creの認識配列としてloxPとlox5171を、相同組換え酵素Flpの認識配列としてFRTとF3を使用した。それらの認識配列を、ベクター内部の3カ所(遺伝子破壊カセットの上流と下流、それに遺伝子トラップカセットの下流)に、インバーテッドな位置関係になるよう配置した。得られたベクターをウイルス感染によりES細胞に導入し、相同組換え酵素CreとFlpが培養細胞レベルで期待通りに働くことを確認した。特に相同組換え酵素Creに関しては、今後、動物個体(マウス)レベルの実験による検証を行い、有効性を確かめる必要がある。
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